変分法とはなにか、変分法と微分法の違い[解析力学Part1]

熱力学

解析力学や熱力学に取り組むうえで重要な変分法について本記事では解説し、具体的な変分法の利用例を紹介しました。

汎関数とは

\(\)関数\(y=f(x)\)は因数である\(x\)に値を代入することで関数\(y(x)\)は値を返します。

つまり、数値→数値という写像が関数なのです。

たとえば\(y=x+1\)という関数で例えると\(x\)に\(2\)を代入すると\(y\)は\(3\)という値を返します。

一方で汎関数とは、関数→数値という写像のことであり、関数を入力することで値を返す関数のことを言います。

具体的には、

$$F[y]=\int_a^b y(x)dx$$

$$F[y]=\int_a^b \sqrt{1+y'(x)}dx$$

などが汎関数に該当します。

変分法と極値をとる条件

関数の極値と極値をとる数値を求めるのが微分法であったように、汎関数の極値と極値をとる関数を求めるのが変分法になります。

汎関数\(F[y]\)を微少量\(\epsilon\eta (x)\)だけ動かしたときの変化は、

$$F[y+\epsilon\eta]=F[y]+\epsilon F^{(1)}[y,\eta]+{\epsilon}^2F^{(2)}[y,\eta]$$

であり、

このときの\(F^{(1)}[y,\eta],F^{(2)}[y,\eta],\cdots\)をそれぞれ汎関数の第1変分、第2変分とよびます。

\(F^{(1)}[y,\eta]\)を\(\delta F\),\(\epsilon\eta (x)\)を\(\delta y\)と表記することもある。

その場合、

$$F[y+\delta y]=F[y]+\delta F[y,\delta y]+\cdots$$

のようになります。

汎関数\(F[y]\)が極値を取るとき、関数\(y\)を少し動かしても\(F[y]\)の値が変わらないから、汎関数が極値を取る条件は

$$F^{(1)}[y,\eta]=0 \ (\delta F=0)$$

です。

正確には微分法でいう極値のことを汎関数では停留点関数とよびます。

変分法を用いる例

例題1:等周問題

周の長さの合計が\(L\)となる長方形の面積の最小値を求める問題を考えます。

周りの長さが\(L\)より、

$$2a+2b=L\cdots ①$$

面積は、

$$S=ab\cdots②$$

面積の最小値は\(b\)を消去して\(a\)で微分法を用いて求めることもできますが、今回は変分法を利します。

横の辺の長さを\(a\)から\(a+\delta a\)だけ長くした新たな長方形を考えます。

同様に縦の辺の長さの増加分を\(\delta b\)とすると、式①より

$$\delta a+\delta b=0\cdots③$$

この長方形の面積\(S[a+\delta a]\)は、式①と③より

$$\begin{eqnarray}S[a+\delta a] &=& (a+\delta a)(b+\delta b) \\ &=& (a+\delta a)(b-\delta a) \\ &=& ab+(\frac{L}{2}-2a)\delta a-{\delta}^2 a\end{eqnarray}$$

ゆえに面積が極値を取るのは、\((\frac{L}{2}-2a)\delta a=0\)のときです。

\(\delta a\)は任意の微小な関数より\(\delta a\neq 0\)、よってこれを満たすのは、

$$a=\frac{L}{4}, \ S=\frac{L^2}{16}$$

になります。

例題2:最短距離

左図のような長さが最も短くなる関数\(y=f(x)\)が何かについて変分法を用いて考えます。

関数\(y=f(x)\)の\(x=a\)から\(x=b\)の長さ\(F[y(x)]\)は、

$$F[y(x)]=\int_a^b \sqrt{1+{y’}^2}dx$$

\(f(y’)=\sqrt{1+{y’}^2}\)とすると、

$$F[y(x)]=\int_a^b f(x)dx$$

この汎関数について\(y(x)\)から\(y(x)+\epsilon \eta(x)\)とすこし変えた場合を考えます。

このとき同様に\(y’\)も\(y’+\epsilon {\eta}'(x)\)と変化するから、\(f(y’)\)は\(f(y’+\epsilon {\eta}’)\)に変化します。

\(f(y’+\epsilon {\eta}’)\)についてテイラー展開すると、

$$\begin{eqnarray} f(y’+\epsilon {\eta}’) &=& f(y’)+\epsilon {\eta}’ \frac{\partial f(y’)}{\partial y’}+{\epsilon}^2{{\eta}’}^2\frac{{\partial}^2 f(y’)}{\partial {y’}^2}+\cdots \\ &=& f(y’)+\epsilon\frac{y’}{\sqrt{1+(y’)^2}}{\eta}’+\cdots \end{eqnarray}$$

ゆえに、

$$\begin{eqnarray} F[y+\epsilon \eta(x)] &=& \int_a^b (f(y’)+\epsilon\frac{y’}{\sqrt{1+(y’)^2}}{\eta}’+\cdots)dx \\ &=& F[y'(x)]+\epsilon \int_a^b \frac{y’}{\sqrt{1+(y’)^2}}{\eta}’dx+\cdots \end{eqnarray}\cdots①$$

ここで右辺の2項目について部分積分を行うと、

$$\int_a^b \frac{y’}{\sqrt{1+(y’)^2}}{\eta}’dx=\left[\frac{y’}{\sqrt{1+{y’}^2}}\eta\right]_a^b-\int_a^b\frac{d}{dx}\left(\frac{y’}{\sqrt{1+{y’}^2}}\right)\eta dx\cdots②$$

関数\(y=f(x)\)において端点\((a,f(a)),(b,f(b))\)は固定されているから、\(\eta(a)=0,\eta(b)=0\)が成り立ちます。

そのため式②は、

$$\int_a^b \frac{y’}{\sqrt{1+(y’)^2}}{\eta}’dx=-\int_a^b\frac{d}{dx}\left(\frac{y’}{\sqrt{1+{y’}^2}}\right)\eta dx$$

であり、それにより式①は、

$$F[y+\epsilon \eta(x)]=F[y'(x)]-\int_a^b\frac{d}{dx}\left(\frac{y’}{\sqrt{1+{y’}^2}}\right)\eta dx+\cdots$$

と変形できます。

ゆえに第一変分\(F^{(1)}[y,\eta]\)は、

$$F^{(1)}[y,\eta]=-\int_a^b\frac{d}{dx}\left(\frac{y’}{\sqrt{1+{y’}^2}}\right)\eta dx$$

であり、極値を取るとき第一変分は0となるから、

$$-\int_a^b\frac{d}{dx}\left(\frac{y’}{\sqrt{1+{y’}^2}}\right)\eta dx=0$$

つまり、距離が最小になるとき、

$$\frac{d}{dx}\left(\frac{y’}{\sqrt{1+{y’}^2}}\right)=0$$

が成り立つのです。

ゆえにこの微分方程式を解くと、求める最短距離は\(y’\)が定数になることがわかるので

$$y(x)=C_1 x+C_2$$

と求まります。(\(C_1,C_2\)は任意の定数)

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