一階常微分方程式\(\frac{dy}{dx}=-\frac{P(x,y)}{Q(x,y)}\)を変形すると
$$P(x,y)dx+Q(x,y)dy=0\cdots①$$
が成り立ちます。
①がある条件のとき、この方程式は完全微分方程式となり一般解を求めることができます。
つまり一階常微分方程式\(\frac{dy}{dx}=-\frac{P(x,y)}{Q(x,y)}\)が変数分離形や同次径にならない場合でも一般解が導けるようになる場合があるのです。
本記事では①が完全微分方程式になる条件およびその解法について解説していきます。
今回の内容では偏微分と全微分の知識が必要になります。
完全微分方程式になる条件
完全微分方程式の定義(条件)は、微分方程式\(P(x,y)dx+Q(x,y)dy=0\)において以下の関係が成り立つときです。
$$\frac{\partial P(x,y)}{\partial y}=\frac{\partial Q(x,y)}{\partial x}\cdots②$$
では、完全微分方程式の条件を知ったうえ一般解の求め方を見てみましょう。求め方を見ればなぜ完全微分方程式の条件を②のように定義したかも理解できるでしょう。
完全微分方程式の解き方
②の関係が成り立つとき、①の式に関して以下のことが言えます。
$$P(x,y)=\frac{\partial F(x,y)}{\partial x},Q(x,y)=\frac{\partial F(x,y)}{\partial y}\cdots③$$
完全微分方程式では\(\frac{\partial P(x,y)}{\partial y}=\frac{\partial Q(x,y)}{\partial x}\)であるから
$$\frac{1}{\partial y}\left(\frac{\partial F(x,y)}{\partial x}\right)=\frac{1}{\partial x}\left(\frac{\partial F(x,y)}{\partial y}\right)$$
より③が成り立つと言えます。
つまり完全微分方程式は以下のように書き換えることができのです。
$$\frac{\partial F(x,y)}{\partial x}dx+\frac{\partial F(x,y)}{\partial y}dy=0\cdots④$$
式④は全微分可能な曲面\(z=F(x,y)\)の全微分の式
$$dz=\frac{\partial F(x,y)}{\partial x}dx+\frac{\partial F(x,y)}{\partial y}dy$$
がdz=0のときの式であるから求める解は
$$F(x,y)=C\cdots⑤$$
となるのです。
つまり、\(P(x,y)dx+Q(x,y)dy=0\)が完全微分方程式のとき式③が成り立つような\(F(x,y)\)を見つければよいのです。
ゆえに完全微分方程式の一般解は以下のように書けます。
$$\int_{x_0}^{x} P(x,y)dx+\int_{y_0}^{y}Q(x_0,y)dy=C\cdots⑥$$
⑥の式は最初に任意の点\((x_0,y_0)\)から\((x_0,y)\)へと積分し、(これが\(\int_{y_0}^{y}Q(x_0,y)dy)\)の部分である)
その次に\((x_0,y)\)から\((x,y)\)に積分しています。(\(\int_{x_0}^{x} P(x,y)dx\)部分)
このようにして完全微分方程式の一般解を求めているのです。
以上解き方がわかったとことで練習問題に取り組んでみましょう。
練習問題
次の微分方程式を解け。
$$(1)(2x+y)dx+(x+3y)dy=0$$
$$(2)(x+e^xsiny)dx+(y+e^xcosy)dy=0$$
解答
⑴\(\frac{\partial}{\partial y}(2x+y)=\frac{\partial}{\partial x}(x+3y)=1\)であるから問題の式は完全微分方程式である。
\(dz=(2x+y)dx+(x+3y)dy\)とすると、dz=0より全微分が0であるから、z=Cが成り立つ。
zをx,yの式で表せば一般解を求めることができるから、起点(0,0)から積分すると
$$z=\int_{0}^{x} (2x+y)dx+\int_{0}^{y}(3y)dy$$
ゆえに整理すると一般解は、
$$x^2+xy+\frac{3}{2}y^2=C$$
である。
⑵
\(\frac{\partial}{\partial y}(x+e^xsiny)=\frac{\partial}{\partial x}(y+e^xcosy)=e^x+cosy\)
であるから問題の式は完全微分方程式である。
\(dz=(x+e^xsiny)dx+(y+e^xcosy)dy\)
とすると、dz=0より全微分が0でありz=Cが成り立つ。
\(z\)を\(x,y\)の式で表すと、
$$z=\int_{x_0}^{x}(x+e^xsiny)dx+\int_{y_0}^{y}(y+e^{x_0}cosy)dy$$
ゆえに整理すると、
$$\frac{1}{2}x^2+e^x{siny}+\frac{1}{2}y^2-\left(\frac{1}{2}{x_0}^2+e^{x_0}{sin{y_0}}+\frac{1}{2}{y_0}^2\right)=C$$
\(\left(\frac{1}{2}{x_0}^2+e^{x_0}{sin{y_0}}+\frac{1}{2}{y_0}^2\right)\)は定数項であるから、一般解は
$$\frac{1}{2}x^2+e^x{siny}+\frac{1}{2}y^2=C$$
である。
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