積分因子による完全微分方程式の導出[微分方程式入門Part7]

微分方程式

\(\)完全微分方程式でない微分方程式\(P(x,y)dx+Q(x,y)dy=0\cdots①\)について、そのままでは解くことができないが適当な関数\(\mu(x,y)\)を①の両辺にかけることで

$$\mu(x,y)P(x,y)dx+\mu(x,y)Q(x,y)dy=0$$

という完全微分方程式をつくり一般解を求めることができる。

こうした関数\(\mu(x,y)\)のことを積分因子(積分因数)とよび、本記事では積分因子の判定条件および導出方法について解説する。

長い数式は横スクロールで閲覧可能です。

積分因子の判定条件

積分因子を求めるためにどんな関数が積分因子\(\mu(x,y)\)となるのか考えてみよう。

$$\mu(x,y)P(x,y)dx+\mu(x,y)Q(x,y)dy=0$$

は完全微分方程式であるから以下の関係が成り立つ。

$$\frac{\mu(x,y)P(x,y)}{\partial y}=\frac{\mu(x,y)Q(x,y)}{\partial x}$$

この式を整理すると以下の偏微分方程式が成り立つ。

$$P\frac{\partial\mu}{\partial y}-Q\frac{\partial\mu}{\partial x}=-\mu\left(\frac{\partial P}{\partial y}-\frac{\partial Q}{\partial x}\right)\cdots②$$

よって②の式を満たせば\(\mu(x,y)\)は積分因子であると言えるだろう。

積分因子の導出

積分因子の判定条件から積分因子を求めるためには②の式を満たす\(\mu(x,y)\)を見つければいいが②は偏微分方程式であり、これを満たす\muを求めることは難しい。

しかし、ある限定的な条件においては②の式を簡単にすることができ積分因子を一般的に求めることができる。

積分因子を簡単に求めれる条件は以下の2つである。

⑴\(\frac{1}{Q}\left(\frac{\partial P}{\partial y}-\frac{\partial Q}{\partial x}\right)\)がxのみの関数である場合

⑵\(\frac{1}{P}\left(\frac{\partial P}{\partial y}-\frac{\partial Q}{\partial x}\right)\)がyのみの関数である場合

それぞれの場合において積分因子がどうなるかを見てみよう。

⑴\(\frac{1}{Q}\left(\frac{\partial P}{\partial y}-\frac{\partial Q}{\partial x}\right)\)がxのみの関数である場合

\(\frac{1}{Q}\left(\frac{\partial P}{\partial y}-\frac{\partial Q}{\partial x}\right)=f(x)\)とすると、式②は以下のように変形できる。

$$\frac{P}{Q}\frac{\partial\mu}{\partial y}-\frac{\partial\mu}{\partial x}=-\mu f(x)\cdots③$$

\(\mu(x,y)\)は条件③を満たせばよいから、yに依存しない\(\mu(x)\)で式③を満たすものが存在すると考えられるため、③は

$$\frac{d\mu}{dx}=\mu f(x)\cdots④$$

④式は変数分離形であるから\(\mu\)に関して解を一つ求めると、

$$\mu=exp(f(x))=exp\left(\int \frac{1}{Q}\left(\frac{\partial P}{\partial y}-\frac{\partial Q}{\partial x}\right)dx\right)$$

⑵\(\frac{1}{P}\left(\frac{\partial P}{\partial y}-\frac{\partial Q}{\partial x}\right)\)がyのみの関数である場合

\(\frac{1}{P}\left(\frac{\partial P}{\partial y}-\frac{\partial Q}{\partial x}\right)=g(y)\)とすると、②は以下のように変形できる。

$$\frac{\partial\mu}{\partial y}-\frac{Q}{P}\frac{\partial\mu}{\partial x}=-\mu g(y)\cdots⑤$$

⑴と同様にxに依存しない\(\mu(x)\)で式⑤を満たすものが存在すると考えられるため、⑤は

$$\frac{d\mu}{dy}=-\mu g(y)\cdots⑥$$

⑥は変数分離形であるから\(\mu\)に関して解を一つ求めると、

$$\mu=exp(g(y))=exp\left(-\int \frac{1}{P}\left(\frac{\partial P}{\partial y}-\frac{\partial Q}{\partial x}\right)dy\right)$$

まとめ

以上の内容から積分因子を求められる条件およびその積分因子の値は以下のようになる。

⑴\(\frac{1}{Q}\left(\frac{\partial P}{\partial y}-\frac{\partial Q}{\partial x}\right)\)がxのみの関数である場合、\(exp\left(\int \frac{1}{Q}\left(\frac{\partial P}{\partial y}-\frac{\partial Q}{\partial x}\right)dx\right)\)は積分因子になる。

⑵\(\frac{1}{P}\left(\frac{\partial P}{\partial y}-\frac{\partial Q}{\partial x}\right)\)がyのみの関数である場合、\(exp\left(-\int \frac{1}{P}\left(\frac{\partial P}{\partial y}-\frac{\partial Q}{\partial x}\right)dy\right)\)は積分因子になる。

練習問題

積分因子を求めて、次の微分方程式を解け

$$(4xy-x^2)dx+x^2dy=0$$

解答

\(P=4xy-x^2\),\(Q=x^2\)とすると、\(P_y=4x\),\(Q_x=2x\)であるから、\(P_y\neq Q_x\)であり完全微分方程式でない。

しかし、\(\frac{1}{Q}(P_y-Q_x)=\frac{2}{x}\)であるから、

\(exp(\int \frac{2}{x}dx)=e^{log{x^2}}=x^2\)が積分因子となる。

よって、

$$(4x^3y-x^4)dx+x^4dy=0\cdots⑦$$

は完全微分方程式となる。

式⑦を起点(0,0)として積分すると一般解は以下のようになる。

$$\int_{0}^{x}(4x^3-x^4)dx=C$$

整理して、$$x^4y-\frac{1}{5}y^5=C$$が求める答えである。

コメント

タイトルとURLをコピーしました