微分演算子とはなにか、演算子の定理と公式まとめ[演算子法Part1]

微分方程式

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微分演算子とは

\(\)関数\(y\)の導関数\(\frac{dy}{dx}\)であるが、\(\frac{d}{dx}=D\)とおいて導関数を\(Dy\)で表すことができます。

こうした記号\(D\)を微分演算子とよびます。

この微分演算子を用いることで高次の導関数について

$$D^2y=y”,D^ny=y^{(n)}$$

と書くことができるのです。

この演算子を用いれば高次定係数線形微分方程式

$$a_0y^{(n)}+a_1D^{(n-1)}+\cdots+a_{n-1}D+a_n=R(x)$$

について、

\(P(D)=a_0D^n+a_1D^{n-1}+\cdots+a_{n-1}D+a_n\)とおけば

\(P(D)y=R(x)\)と簡潔に表すことができます。

加えて演算子を用いることで簡単に微分方程式を解くことができます。演算子を使って微分方程式を解くための準備のために微分演算子の基本的性質についてみていきましょう。

微分演算子の基本定理

微分演算子\(D\)について以下の基本的な演算法則が成り立ちます。

微分演算子の演算法則

\(D\)の多項式\(P_1(D),P_2(D)\)について以下の⑴から⑶の等式が成り立つ。

$$(1)P_1(D)[k_1y_1+k_2y_2]=k_1P_1(D)y_1+k_2P_1(D)y_1(k_1,k_2は実数)$$

$$(2)[P_1(D)+P_2(D)]y=P_1(D)y+P_2(D)y$$

$$(3)[P_1(D)P_2(D)]y=P_1(D)[P_2(D)y]=P_2(D)[P_1(D)]$$

式⑴が意味するのは定数倍は演算子の外に出すことができるということです。

例えば、\(D[2x^3+3x]=2Dx^3+3Dx\cdots①\)と計算することができます。

式①が\(\frac{d}{dx}[2x^3+3x]=2\frac{d}{dx}x^3+3\frac{d}{dx}x\)と書き換えることができることから式①が成り立つことは理解できるでしょう。

式⑵は分配法則が演算子でも成り立つということを意味しています。

つまり\([D^2+D]x=D^2x+Dx\)と計算することができます。

式⑶は交換法則が演算子で成り立つことを意味しています。

\(D(D^2+2D)x^4=(D^2+2D)Dx^4=24(x+x^2)\)のように演算子を入れ替えても答えが変わらないのです。

交換法則が演算子でも成り立つのは\(P_1,P_2\)が同じ微分演算子\(D\)の多項式で表されるからであり、どんな演算子でも成り立つものではないので注意してください。

ここで具体的に理解を深めるために例題を解いてみましょう

例題

\((D^2+D)(x^3+x)\)を計算しなさい

解答

$$\begin{eqnarray} (D^2+D)(x^3+x) &=& D^2(x^3+x)+D(x^3+x) \\ &=& 6x+(3x^2+1) \\ &=& 3x^2+6x+1 \end{eqnarray}$$

以上演算子についての基本的な演算法則がわかったところで演算子の役に立つ公式についてみていきましょう。

微分演算子の基本的性質

微分演算子では以下の公式が成り立ちます。

$$(1)P(D)e^{\alpha x}=P(\alpha)e^{\alpha x}$$

$$(2)P(D)[e^{\alpha x}f(x)]=e^{\alpha x}P(D+\alpha)f(x)$$

$$(3)P(D)[xf(x)]=P'(D)f(x)+xP(D)f(x)$$

証明

\(De^{\alpha x}=\alpha e^{\alpha x},D^2e^{\alpha x}={\alpha}^2e^{\alpha x},\cdots,D^ne^{\alpha x}={\alpha}^ne^{\alpha x},\cdots\)が成り立つから、

\(P(D)=a_0D^n+a_1D^{n-1}+\cdots+a_{n-1}D+a_n\)とすると、

$$\begin{eqnarray} P(D)e^{\alpha x} &=& (a_0D^n+a_1D^{n-1}+\cdots+a_{n-1}D+a_n)e^{\alpha x} \\ &=& (a_0{\alpha}^n+a_1{\alpha}^{n-1}+\cdots+a_{n-1}{\alpha}+a_n)e^{\alpha x} \\ &=& P(\alpha)e^{\alpha x} \end{eqnarray}$$

ゆえに、\(P(D)e^{\alpha x}=P(\alpha)e^{\alpha x}\)は成り立つ。

$$\begin{eqnarray}D[e^{\alpha x}f(x)] &=& (De^{\alpha x})f(x)+e^{\alpha x}Df(x)=\alpha e^{\alpha x}f(x)e^{\alpha x}Df(x) \\ &=& e^{\alpha x}(D+\alpha)f(x)\end{eqnarray}$$

$$\begin{eqnarray}D^2[e^{\alpha x}f(x)] &=& D[D[e^{\alpha x}f(x)]]=D[e^{\alpha x}(D+\alpha)f(x)] \\ &=& e^{\alpha x}(D+\alpha)(D+\alpha)f(x) \\ &=& e^{\alpha x}(D+\alpha)^2f(x) \end{eqnarray}$$

$$D^n[e^{\alpha x}f(x)]=e^{\alpha x}(D+\alpha)^nf(x)$$

が成り立つから、

\(P(D)=a_0D^n+a_1D^{n-1}+\cdots+a_{n-1}D+a_n\)とすると、

$$\begin{eqnarray} f(D)[e^{\alpha x}f(x)] &=& a_0D^n[e^{\alpha x}f(x)]+a_1D^{n-1}[e^{\alpha x}f(x)]+\cdots+a_{n-1}D[e^{\alpha x}f(x)]+a_ne^{\alpha x}f(x) \\ &=& e^{\alpha x}[a_0(D+\alpha)^{n}+a_1(D+\alpha)^{n-1}+\cdots+a_{n-1}(D+\alpha)+a_n]f(x) \\ &=& e^{\alpha x}f(D+\alpha)f(x) \end{eqnarray}$$

ゆえに、\(f(D)[e^{\alpha x}f(x)]=e^{\alpha x}f(D+\alpha)f(x)\)は成り立つ。

$$D[xf(x)]=f(x)+xf'(x)$$

$$D^2[xf(x)]=2f'(x)+xf”(x)$$

$$D^n[xf(x)]=nf^{(n-1)}(x)+xf^{(n)}(x)$$

が成り立つから、

\(P(D)=a_0D^n+a_1D^{n-1}+\cdots+a_{n-1}D+a_n\)とすると、

$$\begin{eqnarray} P(D)[xf(x)] &=& (a_0D^n+a_1D^{n-1}+\cdots+a_{n-1}D+a_n)[xf(x)] \\ &=& (a_0nf^{(n-1)}(x)+a_1(n-1)f^{(n-2)}(x)+\cdots+a_{n-1}2f'(x)+a_nf(x))+x(a_0D^n+a_1D^{n-1}+\cdots+a_{n-1}D+a_n)f(x) \\ &=& P'(D)f(x)+xP(D)f(x) \end{eqnarray}$$

ゆえに、\(P(D)[xf(x)]=P'(D)f(x)+xP(D)f(x)\)が成り立つ。

また、以下の2つの公式も演算子を使う上で有用であるため頭にとどめておくと良いです。

$$(4)P(D^2)sin(ax+b)=P(-a^2)sin(ax+b)$$

$$(5)P(D^2)cos(ax+b)=P(-a^2)cos(ax+b)$$

式(4),(5)の証明も式(1)から(3)と同じ方法で証明できるので興味のある人はやってみるといいと思います。

以上が演算子の基本公式になります。今回学習した演算子とつぎの記事で学習する逆演算子をつかえば微分方程式を解くことができるようになるのでぜひ続けて読んでみてください。

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