逆演算子とは何か、逆演算子の公式まとめ[演算子法Part2]

微分方程式

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逆演算子とはなにか

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微分演算子\(D\)を用いて\(\frac{dy}{dx}=f(x)\)を\(Dy=f(x)\)と表すことができました。

逆演算子はこれと全く逆、つまり微分ではなく積分を表すもので、

\(y=\int f(x)dx\)を\(y=\frac{1}{D}f(x)\)と表すことができます。

この\(\frac{1}{D}\)を逆演算子と呼び、\(x\)で積分するという意味を持つのです。

\(y=\frac{1}{P(D)}f(x)\)を計算することができれば微分方程式\(P(D)y=f(x)\)の特殊解を求めることができます。

そんな逆演算子について成り立つ演算法則について確認しどのように計算が行えるかを学習しましょう。

逆演算子の基本定理

演算子と同じように逆演算子について以下の法則が成り立ちます。

逆演算子の基本定理

\(P_1(D),P_2(D)\)を\(D\)の多項式とすると、

$$(1)\frac{1}{P_1(D)}[k_1f(x)+k_2g(x)]=k_1\frac{1}{P_1(D)}f(x)+k_2\frac{1}{P_1(D)}g(x)$$

$$(2)\left[\frac{1}{P_1(D)}+\frac{1}{P_2(D)}\right]f(x)=\frac{1}{P_1(D)}f(x)+\frac{1}{P_2(D)}f(x)$$

$$(3)\frac{1}{P_1(D)P_2(D)}f(x)=\frac{1}{P_1(D)}\left[\frac{1}{P_2(D)}f(x)\right]=\frac{1}{P_2(D)}\left[\frac{1}{P_1(D)}f(x)\right]$$

⑴から⑶からわかるように微分演算子と同様に逆演算子も微分演算子\(D\)の多項式\(P_1(D),P_2(D)\)について、

  • 定数倍は外に出せる
  • 分配法則が使える
  • 交換法則が使える

以上の3つが成り立つことがわかります。

この演算法則を用いることで逆演算子のさまざまな等式を導出することができます。

次の項に実際によく使う逆演算子の公式について記載しました。

逆演算子の基本公式

逆演算子について以下の公式が成り立ちます

$$(1)\frac{1}{P(D)}e^{\alpha x}=\frac{1}{P(\alpha)}e^{\alpha x}(P(\alpha)\neq0)$$

$$(2)\frac{1}{P(D)}[e^{\alpha x}f(x)]=e^{\alpha x}\frac{1}{P(D+\alpha)}f(x)$$

証明

(1)

演算子の公式\(P(D)e^{\alpha x}=P(\alpha)e^{\alpha x}\)が成り立つから、

\(P(\alpha)\neq0\)より、両辺を\(P(\alpha)\)で割ると、

$$\frac{1}{P(\alpha)}P(D)e^{\alpha x}=e^{\alpha x}$$

ゆえに、

$$P(D)\left[\frac{1}{P(\alpha)}e^{\alpha x}\right]=e^{\alpha x}$$

両辺を\(P(D)\)で割れば、

$$\frac{1}{P(D)}e^{\alpha x}=\frac{1}{P(\alpha)}e^{\alpha x}$$

が成り立つ。

(2)

演算式の公式\(P(D)[e^{\alpha x}g(x)]=e^{\alpha x}P(D+\alpha)g(x)\)から

\(f(x)=\frac{1}{P(D+\alpha)}[e^{-\alpha x}f(x)]\)とおけば、

$$P(D)\left\{e^{\alpha x}\frac{1}{P(D+\alpha)}[e^{-\alpha x}f(x)]\right\}=e^{\alpha x}P(D+\alpha)\frac{1}{D+\alpha}[e^{-\alpha x}f(x)]$$

右辺は、\(P(D+\alpha)=\frac{1}{P(D+\alpha)}=1\)より\(f(x)\)になるから、

$$P(D)\left\{e^{\alpha x}\frac{1}{P(D+\alpha)}[e^{-\alpha x}f(x)]\right\}=f(x)$$

両辺を\(P(D)\)で割れば、

$$\frac{1}{P(D)}[e^{\alpha x}f(x)]=e^{\alpha x}\frac{1}{P(D+\alpha)}f(x)$$

が成り立つ。

式(2)について、\(P(D)=D-\alpha\)とすると

$$\frac{1}{D-\alpha}e^{\alpha x}f(x)=e^{\alpha x}\frac{1}{D}f(x)$$

\(g(x)=e^{\alpha x}f(x)\)とすると、\(f(x)=e^{-\alpha x}g(x)\)より、

$$\begin{eqnarray}\frac{1}{D-\alpha}g(x) &=& e^{\alpha x}\frac{1}{D}e^{-\alpha x}g(x) \\ &=& e^{\alpha x}\int e^{-\alpha x}g(x)dx \end{eqnarray}$$

が成り立ちます。

つまり、

$$\frac{1}{D-\alpha}f(x)=e^{\alpha x}\int e^{-\alpha x}f(x)dx$$

が式(2)から導くことができるのです。この公式も逆演算子の計算を行う際に役に立つので覚えておくと良いでしょう。

以上のように三角関数についても逆演算子の計算を行う上で有用な公式があり、以下の式(3)から(8)になります。

$$(3)\frac{1}{P(D^2)}sin(ax+b)=\frac{1}{P(-a^2)}sin(ax+b)$$

$$(4)\frac{1}{P(D^2)}cos(ax+b)=\frac{1}{P(-a^2)}cos(ax+b)$$

ただし、(3),(4)において\(P(-a^2)\neq0\)

$$(5)\frac{1}{D^2+a^2}sin{ax}=-\frac{1}{2a}xcosax$$

$$(6)\frac{1}{D^2+a^2}cos{ax}=\frac{1}{2a}xsinax$$

$$(7)\frac{1}{D^2+a^2}xsinax=\frac{1}{4a^2}(xsinax-ax^2cosax)$$

$$(8)\frac{1}{D^2+a^2}xcosax=\frac{1}{4a^2}(xcosax+ax^2sinax)$$

以上の公式はオイラーの公式\(e^{i\theta}=cos\theta+isin\theta\)と公式(1),(2)から導くことができるので興味のある方はやってみてください。

式⑴から⑻を使うことで基本的な関数の逆演算子の計算ができるようになります。実際に次の項で練習問題を解いて逆演算子の計算を行ってみましょう。

練習問題

\(\frac{1}{D-\alpha}f(x)=e^{\alpha x}\int e^{-\alpha x}f(x)dx\)を用いて以下の式を計算せよ。

$$(1)\frac{1}{(D-1)^2}e^x\quad(2)\frac{1}{D^2+1}e^{2x}$$

解答

(1)

$$\begin{eqnarray}\frac{1}{(D-1)^2}e^x &=& \frac{1}{D-1}\left[\frac{1}{D-1}e^x\right] = \frac{1}{D-1}\left[e^x \int dx\right] \\ &=& \frac{1}{D-1}xe^x = e^x \int e^{-x}xe^xdx \\ &=& \frac{1}{2}xe^x \end{eqnarray}$$

(2)

複素数を用いて\(D^2+1=(D+i)(D-i)\)と因数分解できることから、

$$\begin{eqnarray} \frac{1}{D^2+1}e^{2x} &=& \frac{1}{(D+i)(D-i)}e^{2x} \\ &=& \frac{1}{D+i}\left[e^{ix}\int e^{(2-i)x}dx\right] \\ &=& \frac{1}{D+i}\left[e^{ix}\frac{1}{2-i}e^{(2-i)x}\right] \\ &=& \frac{1}{2-i}\frac{1}{D+i}e^{2x} \\ &=& \frac{1}{2-i}e^{-ix}\int e^{(2+i)x}dx \\ &=& \frac{1}{2-i}\frac{1}{2+i}e^{2x}=\frac{1}{5}e^{2x} \end{eqnarray}$$

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